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デーモポーンつらい

エレウシスの街を治める王の一人であるケレオス、その待望の息子デモポン。
母の愛を受け、四人の年の離れた姉たちに可愛がられ、跡取り息子としてすくすく成長するはず。
だった。
女神の腕に抱かれるまでは。

デモポンは、聡く優しい少年になっていた。父ケレオスは高齢のためすでに亡く、しかし王の息子として、彼もまたエレウシスの王になるべき男として十分な教育を施されていた。政治、経済、外交、そして宗教。この時代の男として、なにひとつ不自由ない、満たされた生活を送っていたはずだった。
しかし彼の心は、なぜかいつも満たされなかった。


子どものころから、どこか自分には欠けたところがあるという実感があった。
母に甘やかされても、腹がくちくなっても、友人たちと遊んでいても、やがて思春期を迎え性のことで体を満たすようになっても、心がなにかに隔てられたように、すこし遠くにあるように思っていた。

彼の住む街の近くに、まだ新しい大きな社があった。
麦を実らせ豊穣をつかさどるデメテル女神、その娘であるペルセポネ女神の社である。
エレウシスの王たちの中から、司祭が選出され、毎年大きな祭儀を行うのが恒例となっている。

成人したデモポンは、妻をめとり、王となった。子にも恵まれた。それでもまだ、彼の心が満たされることはなかった。
そしてついに彼は司祭に選ばれることとなった。司祭になるにあたり、あらためて彼は入信の儀を受けることとなった。

エレウシスの秘儀についての知識は当然ながら持っていた。
しかし話を「聞いた」だけではまだ教義の入り口に立ったにすぎないと、すでに秘儀に参加している姉が言った。

でもあなたなら、「一目見れば」「理解する」でしょう、と年老いた母が言った。

なぜかすこし、寂しそうに言った。

そう伝えると、母はにわかに泣き出した。

「私が、愚かだったから。なにも知らなかったから。あの御方の意思に反したから。そうでなければ、あなたは、今頃」


***

デメテル女神に人生めちゃくちゃにされたデモポンくんが見たいですね…デメテルママの腕に抱かれる快楽を赤ちゃんの時に知ってしまったがゆえにもうそれ以外を受け入れられないし何をしても満たされない、かわいそうなデモポン…

エレウシスにおいて成人するまで入信してないとか嘘にもほどがあるなと思うのでちょっともうちょっとねりねりする

じっさい女神ほどすぐれた乳母はいないので姉たちの誰もデモポンを泣き止ませることはできないって記述もあるので、母や姉たちはちょっとだいぶトラウマになってるんじゃないかな、この件、でもだからといって入信させないで伸び伸びさせとくのはちょっと無理があるかな
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エレウシスの秘儀と後続の宗教の関係…?

デーメーテール女神は、娘神を亡くしてしまう。
ペルセポネー女神は、死の国にとらわれて、そして戻ってくる。
しかしエレウーシスの秘儀にあずかる者は、死後の世界においても亡霊のようにならず、正気をたもち、次なる生を約束されている。

女神が、おれたち人間の代わりに死んでいる…?

それってもしかして…?

エレウーシス秘儀→オルフェウス教→。。。。
ペルセポネ―女神の性質は後続の宗教の救世主に受け継がれている。。と言ってもよいのでは。。

古代の通過儀礼において経験する死(象徴的な…も含む)、死なないと儀礼にクリアできないし生まれ変われないし新しい私になれない、ので、

それを女神が肩代わりしてくれている…?

聡い心もつペルセポネ

伝令神ヘルメスが、ゼウスの命で冥界へと赴き、ハデスよりペルセポネを地上へ取り戻さんと説得するシーン。
すると 地下 に 住む 者 たち の 王 ハーデース は 眉 を 上げ て 微笑み〔† 九 四〕、 神 々 の 王 ゼウス の 命 に 従っ た。 し て ただちに、 聡い 心 もつ ペルセフォネー に 命じ て 言っ た。
 
ホメーロス. ホメーロスの諸神讚歌 (ちくま学芸文庫) (Kindle の位置No.372-374). 筑摩書房. Kindle 版. 
「畏き妃」と訳されている342行目、このペルセポネに掛かる「畏い」δαΐφρονι(daiphron)という単語は、
主に男性の指導者や戦士に使われる単語であり(ホメロスでも出てくる)、
男性的で戦いの心をもつ、いさましい、といった能動的な意味をもつエピテトンである、
ということなんですけど

えーーーー!!!ペルセポネさま戦士のような勇ましさかしこさであるってことですか!!!!えーーーーー!!!

この時点まで、ペルセポネ本人に関する描写は少なく、
攫われるときに父神ゼウスに助けを求める声をあげる程度、その程度だったんですよね。
ここにきて、ハデスのかたわらで母を恋い慕いながらも「恐ろしい謀略を思いめぐらしている」(345行目)急に個が立ち始めたペルセポネさまであり、
正直この「恐ろしい謀略」がインパクト大すぎていたのだけれども
むしろそのあとに、こんなペルセポネの勇ましさ、胸に持つ強い意志、攫われて泣いている乙女ではもはやない、凛々しい面をこの単語一語で表されてしまう、、、
デメテル讃歌を作った人の言葉選びの『ヤバさ』を全力でぶつけられてしまい、
圧倒されてしばらく呼吸の仕方を忘れてしまった、、、

むしろ「恐ろしい謀略」の箇所は、テキストが破損しており、単語をおぎなって何通りもの解釈があるらしく、Foleyは『デメテル』を主語に持ってきた解釈をしていたりするので、これがペルセポネのことだとは言い切れないみたいなんだけど、
(いや、、文脈的に考えてペルセポネであると思う、、私もそう思う)

それにしても、「恐ろしい謀略」ってなんだろうね。
会話の中では「(エレウシスの秘儀は死後の世界の幸福を約束するものなので、それにのっとって)人間を全部生き返らせてやる、死なせない、とか…?」という感じだったけど
ここに関しての注釈は特になかったので、謎のまま…。

デメテル讃歌のコメンタリーを読んでいるよ

Helene P.Foley編『The Homeric Hymn to Demeter_Translation,Commentary,and Interpretive Essays』PRINCETON UNIVERSITY PRESS,1994

https://www.amazon.co.jp/dp/B00EKJDLVC/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

こちらをGoogle翻訳に突っ込みながら、ふたばさんと一緒にちまちま読み進めているうえで、
え~~~それは萌えたポイントですね!!っていうのを書き残していくメモです。
ふたばさんがギリシャ語をガンガン読んでくださったり、膨大なふたば文庫からひも解いてくださるので、はちゃめちゃに深読みできて楽しいの権化です。
一人だったらここまで理解が進まなかったと思う本当に。ふたばさまありがとう……

あんまり内容にがっつり触れすぎちゃうとどうなんだろうね?どうなんだろうね…。まずいのかな…。
まあ引用を超えるものにはならないと思うので大丈夫だろう……。

###ここに各ページへのリンクとかガイドを貼るのよ###

エレウシス教における罵詈雑言?

デーメーテール讃歌において、人間の老婆に身をやつしたデメテル女神が、エレウシスの名士ケレオスの館に招かれ、娘を喪った悲しみを胸に沈黙していたところ、イアムベーなる女が卑猥な冗談を言って女神の心を和ませた、という記述がある。

  ついに機転の利くイアムベーが女神に向かってしきりに冗談を言い
  畏い女神の尊を楽しませ、微笑み笑わせて御心をなごませた。
 (ホメーロス著、沓掛良彦訳『ホメーロスの諸神讚歌』ちくま学芸文庫、2004年_202-3行目)

いや卑猥な冗談ってなに。

Helene P.Foley編『The Homeric Hymn to Demeter_Translation,Commentary,and Interpretive Essays』PRINCETON UNIVERSITY PRESS,1994

これを読んでいるんですけど、これによるとアリストパネスの『蛙』のコロスとしてエレウシス教の入信者が登場し、だらしない言葉や政治批判など行っているとのこと。

 【コロス】
  みんなでいっしょに
  アルケデモスをからかってやろう。
  あいつは七つになっても縁者が生えない
  ところが今じゃデマゴーグ
  地上の亡者をひきいている、
  そしてかしこの悪党の大親分。
  それから人の噂によれば
  墓場でクレイステネスは
  自分の尻の毛を抜いて、頤かきむしり
  うずくまっては胸をうち
  嘆き慟哭しているという、
  セビノスを。こいつはお尻が祖先だ。
  それから人の言うところでは
  馬助の子カリアスは
  獅子皮をば身にまといヴェヌスが丘で戦っている。

  (高津春繁・呉茂一『アリストパネス傑作選(2)Kindle版』グーテンベルク21、2008)

※ここでのコロスは、エレウシス教の入信者としてイアッコス歌をうたっているとされている。

な、なるほど、、、
なかなか、性器の名前を叫ぶ小学生みたいな感じではないけど、
人のうわさ話を下品な方向に振り切ったというか、
ヤフーニュースのコメント欄か?みたいな、そんな感じですね…。

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